どこもかしこもひかりごはん

どこもかしこもひかりごはん

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『あふれでたのは やさしさだった』を読んで、障害児入所施設の実習で出会った子どものことが思い浮かんだ。
忘れてしまわぬように記録しておく。

中学3年生の女の子で、知的障害は軽度だけど、精神障害があって自傷行為などもあった。彼女は穏やかでいつもにこにこしていて、口数は少ない。その子の周りには小さい子たちが集まっていて、みんなのおねーさんって感じだった。物静かで優しいので大人びて見えたが、いつもぬいぐるみを抱えていて、幼さもしっかりとあった。

ある日、わたしは小さい子と一緒に手遊びをして遊んでいると、離れたところでぬいぐるみを抱えている彼女がじーっとその様子を見ていたから、目の端でわたしも様子を伺っていた。しばらくすると、「わたしにも教えてほしい」と側にきて、一緒に手遊びをして遊んだ。

色々と遊びを教えていると、突然、「わたしも保育士になりたいけど、多分なれない」とぽそりと呟いて、わたしはとても驚いた。まさかそんなこと言い出すとは思えぬようなこれまでだったから。ニコニコしていたけど、いろんなことをわかっているんだろうなと思うと胸が苦しくなった。

「どうやったらなれるの?」
「大学ってどうやっていくの?」
「勉強は大変?」
と、いろいろなことをポツリポツリと質問してきて、わたしはひとつひとつ答え、を繰り返した。

「勉強は大変だけど、わたしけっこう楽しそうでしょう?まだ、保育士にはなれていないけど、とってもたのしいよ」と伝えると、
「たのしそう。なんか、子どもみたい」
と言われ、わたしは「え"」と、予想外の返事に変な声が出たのを憶えています。
よく考えてるしよくみてるよねえ

「小さい子のことが好きな気持ちとか、保育士になりたいって気持ちは忘れちゃだめだよ。わたしがいる間は、手遊びとかたくさん教えてあげるから、今はちゃんと学校に行くんだよ。周りの人には、保育士になりたいってたくさん伝えるんだよ」
と話して、それから顔を合わせるたびに、いろんな手遊びを一緒にやって過ごした。

わたしはもう涙を堪えるので必死、しかし、とにかく自分にできることを精一杯やらねばと手遊び披露マシンになっていました。
毎日嘔吐が止まらないくらい過酷な実習の中では、これがわたしにできる精一杯の支援で…
でもすごくたのしそうに真剣に覚えようとする彼女は本当に輝いていた

「今日も学校行けなかった」
と、日中の静かな施設をうろちょろしていたときの彼女は、別人のようにやさぐれていましたが。ドンキに売ってるヤンキースエット着てたな

施設実習には厳しい、というかただ文句をつけたい先生もいて、泣かされるくらいの指導(理不尽)もあったけど、彼女はそれを見て「こっちのやつ手伝って」とか言ってフォローしてくれたり「にやり(また小言言われてる)」と目配せをしてくれたりしていた。
助かったなあ…思い出すとその優しさに涙が出ちゃうよ

しっかりしてる、というか、しっかりしちゃうんだろうな。障害児施設といっても、色んな障害を抱えている子がいて、度合いも様々だから、軽度の子はそれなりの歳上の役割も求められていたから。

 

彼女は健やかに過ごせているのだろうか
今どうしているかはわからないことに、後悔とやるせなさみたいなものをずーーーっと心のどこかに感じていたが、

この本を読んで、あの時間は彼女にとって喜びだったんだということが今になってよく伝わり、それだけでわたしの役割はじゅうぶんだったのかなとも思えました。

というアレで思い出話です。

 

誰かのため、とか必死になったりするけど、喜びを感じられる瞬間があるだけでいいんですよね。喜びを感じた先のことは、また当事者のものだから。
本の内容も、わたしの経験もイレギュラーだけど、こういうことは多くの人に知っていてほしいな。
何かしてあげようとしなくていいから、ただ知っておいてほしい。眼差しだけでもじゅぶん伝わるから。

彼女がわたしに夢を打ち明け、心を開いてくれるようになった出来事も思い出したから、トゥービーコンティニュー

ちな今日は疲れすぎてコーヒー5杯くらい飲んだ。下痢かな

日曜日の閑散御茶ノ水、けっこう好き

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